全米初の民族学カリキュラムを採用ーカリフォルニア公立高校

アメリカでの人種差別問題の深刻化を背景に、3月11日、カリフォルニア州教育委員会は、差別や抑圧についての教育の重要性を述べ、全米初となる、州全体を対象とした高校向けの民族学カリキュラムを承認した。8時間に及ぶ公開会議の後、11対0で承認されたこのカリキュラムは、他の州が追随するモデルとなることが期待されるものだ。会議で発言した教育者や公民権運動の指導者たちは、ジョージア州で起きたアジア系女性を中心とする8名の殺害事件を人種差別の最新の悲劇的な例として取り上げた。そして、教育が憎しみや差別をなくすために不可欠な手段であることを思い知らされたと述べた。「人種差別は過去のものでなく今も眼前にある危機であると受け止めています」と、ジョー・バイデン大統領の教育移行チームを率いたリンダ・ダーリング=ハモンド教育委員長は述べる。「また、最終的に人種差別をなくすためには歴史を理解することが欠かせません」。

カリキュラムの作成には3年を要した。さまざまなグループから、取り残されることや誤って伝えられることを危惧するパブリックコメント(※1)が10万件以上寄せられることになった。委員会の投票に先立って行われたパブリックコメントには約150名の発信者が集まり、その多くはカリキュラムお承認しないことを要求し、カリキュラムの作成中に行われた激しい議論が繰り返された。

最も大きな批判は、ユダヤ人グループと親アラブ派グループによるもので、それぞれが互いの歴史を沈黙させようとしていると非難しあった。
自身がユダヤ人であり、ホロコーストの生存者の子孫であると名乗る発言者たちは、このカリキュラムが「中東のユダヤ人のユニークな物語を消し去っている」と批判した。一方、このカリキュラムは反アラブ的であり、アラブ系アメリカ人に関する内容を消去し、さらにパレスチナ人に関する以前の内容を削除していると批判する人たちもいた。

何年もかけて作成された900ページ近いこの民族学モデルカリキュラムは、「アメリカの歴史の授業で扱われることのない歴史的に軽んじられてきた人々」の闘争や貢献について高校生に教えることを目的としている。この教材は、大学レベルの民族学研究の焦点である4つのグループ―アフリカ系アメリカ人、チカーノ/ラテン系アメリカ人、アジア系アメリカ人、太平洋諸島系とアメリカ原住民―を扱っている。また、伝統的には民族学のカリキュラムで扱われていないが、ユダヤ人、アラブ系アメリカ人、シーク系アメリカ人、アルメニア系アメリカ人なども、「抑圧やカリフォルニア州への貢献において語るべき物語がある」と、州教育長のトニー・サーモンド氏は述べる。これらのグループは、初期の草案では含まれていなかったことへの異議を受けて追加されている。
カリフォルニア州教育省によれば、これは全米で初めての民族学モデルカリキュラムになるという。民族学の教育に違ったアプローチをとっている州もある。オレゴン州では社会科のカリキュラムに民族学の基準を設けており、コネチカット州の高校では、2022年秋までに黒人とラテン系研究のコースを設けることが要求されている。カリフォルニア州の民族学カリキュラムのコース教材は33のレッスンプランで構成されているが、各学校はここから生徒のコミュニティに合わせて選択して使用する。仮ドルに芦生のKinderから高校までの生徒620万人のうち、4分の3以上が非白人。ラテン系55%、白人22%、アジア系または太平洋諸島系12%、アフリカ系5%となっている。

あるレッスンプランは、Black Lives Matter運動(※2)の一環として警察官による残虐行為について議論することを提案する。また別のプランでは、1992年の暴動の間にロサンゼルスにいた韓国系アメリカ人と黒人居住者にインタビューして、すでに生じていた緊張がどのように致命的な暴力にまで発展したのかを研究するよう生徒に促す。
また、第2次世界大戦中に収容所に入れられた日系アメリカ人たちがどのような敵意を向けられていたのかを理解するために彼らの手による詩や芸術を学ぶレッスンもある。

「カリフォルニア州の教育の歴史において極めて重要な瞬間である」と語るのは、公民権運動のアイコンであるフレッド・コレマツ氏の娘、カレン・コレマツ氏だ。コレマツ氏は、第二次世界大戦中の抑留に抵抗し、連邦最高裁判所まで戦い、最終的には敗訴したが、公民権運動に生涯を捧げた日系アメリカ人である。「私の父が言ったように、『正しいことのために立ち上がれ』。偏見は無知であり、私たちが持っている最も強力な武器は教育である」とコレマツは語った。
複数の教育関係者は、このカリキュラムを「出発点」と呼び、今後、追加や補足が行われ、教師は自分のクラスに最適な授業を展開していくと述べた。また人種や民族問題をテーマにしたカリキュラムは意見が分かれるものであることを認めた。

1970年代にサンディエゴ州立大学で民族研究プログラムを立ち上げた元議員で学者でもあるカリフォルニア州長官のシャーリー・ウェーバー氏は、「この批判は必ず続くでしょう。完璧なカリキュラムを作ることはできませんが、ひとつ良いものを作ったとは言えます」と述べている。
また、著名な労働指導者であり公民権活動家のドロレス・ウエルタ氏も、採決の前に演説して採択を促した。「Si, Se Puede!」―これはオバマ大統領が選挙のスローガン「Yes we can!」として借用した、彼女の有名なフレーズだ。「私たちは、人種差別をやめることができます。今がその時なのです」。

(※1)パブリックコメントとは公的機関が物事を決める際に広く公に、意見・情報・改善案などを求める手続きをいう。
(※2)Black Lives Matter運動アフリカ系アメリカ人に対する差別をやめようと始まった人種差別抗議運動のこと。

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